18.1号 - 2009年1月
専門論文
トマス・R.・ハウェル, アラン・W.・ウォルフ, ダイアン・オー
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 53
要約:2007年8月に中国は独占禁止法を成立し、競争規制に関する総合的な制度を成立した約90カ国の一つになった。30年前、経済改革プログラムを開始して以来、中国は経済を世界貿易体制への統合に取り組んできた。この記事では、米国の独占禁止法との明確な違いについて強調しながら、中国の独占禁止法(以下“AML”)を概観する。この記事では、米国と中国の独占禁止に関する政策がどのように展開されたのかを述べ、その相違点としては、中国のAMLは、
過去に一度米国の独占禁止に関する政策に組み込まれた原則と同じような原則の影響を受けているのだが、それらの原則は、試行錯誤の末、米国の政策立案者によって修正または放棄されたのである。この記事では、AMLと米国の独占禁止に関する政策の相違点と、なぜ米国の過去の政策(現在のAMLにある政策)が廃止されたかが述べられている。最後に、この記事は中国の政策立案者がAMLの成立で経済発展や経済革新を目標として締めくくっている。さらに、経済的活力を強めた米国の経験が、中国の政策立案者の参考になれるよう希望を表明している。
ヘレン・アンダーソン博士
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 1
オーストラリアのラッド政権が財界首脳らに、企業による過失に対しての取締役の責任を課すことを含めた、会社法の様々な側面の見直しを表明した。ラッド政権の懸念点としては、現在の法制度が、取締役の意思決定を過度に慎重にさせ、企業の効率性や健全な経済に悪影響を及ぼしているということである。同時に、ラッド政権は、企業や役員が要求される基準に合わない場合に適切な制裁措置を加える必要性も認めている。これらは普遍的な懸案事項である。この記事では、正しい情報に基づいた議論を行うために、各国の会社法について分析し、合致するもしくは合致しない理由を概説する。
ランジタ・デ=シウバ・デ=アルヴィス
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 293
障害者の権利は、障害を持つ子供や女性が直面している複数の差別や服従を考える上で良い視点を与える。人権が連動して作用する枠組み内において、障害のある女性と子供に関する二つの異なる人権条約を同時に実施することを可能にする人権のパラダイムシフトは、女性や子供の障害者に対する多様で横断的な形態での差別に対して、不可欠の護衛を提供するであろう。それと同時に、障害を持つ女性や子供の複数のアイデンティティーとこれらのアイデンティティが入り組んだ様々な問題点に対し、より忠実でより包括的な人権を実践する形態を作るため、異なる社会運動がこれらの交差点で協力しなければならない。
ヤングヒー・リー博士
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 283
リー教授は基調演説で世界の人権条約の定めるところによる障害者の人権の歴史を説明する。演説は子供の権利条約(以下CRC)と障害者の権利に関する条約(以下CRPD)を焦点とする。CRCは障害を持った子供の権利を保護する最初の条約であった。リー教授は演説でCRPDが障害者のための新権利を作成しないが、重要な第一歩であると述べている。リー教授はCRPDが障害者のニーズと状況に対応する法制度を確立すると強調している。
翻訳と小論文
曹健明 Cao Jianming
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 97
要約:中国が世界貿易機関に加盟してから5年が経った今、中国最高人民法院元副院長・曹健明氏が、中国における知的財産規制の実施問題について論じる。2020年までに『革新国家』になる国策の観点から、曹氏は問題点と進展を明らかにする。中国最高人民法院の『解釈』(全ての法廷の裁決を拘束する効果を持つ規制書類)による知的財産保護に対する具体的な改善点を説明する。透明性、完全な補償、暫定の差し止め命令、裁判後の侵害行為、そしてテクノロジーに関する紛争の訴訟を取り扱う。さらに曹氏は裁判官における主な課題を要約する。
ウルリカ・ブッシュバーケル・コネリー
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 123
要約:カンボジアには、障害を持つ者の割合は世界で最も高い国の一つである。障害を持つカンボジア人の数は少なくとも65万人で、140万人まで及ぶ可能性がある。そして、将来には障害の発生が増えると予想されている。多くのカンボジア人が少なくとも一つの障害を持っているにもかかわらず、カンボジアは彼らの人権を保護する適切な法規定がない。障害問題を取り扱う総合的な法律がない。存在する少数の法律は、暗黙の保護に過ぎず、または直接的に障害者を差別する。
カンボジアの障害者の権利制度の不適切性は、カンボジアが署名し、近い将来に批准すると予想されている障害者の権利に関する条約(以下“条約”)への順守に失敗したことに影響を受けている。障害者のための最低限の保護を提供するためのカンボジアの必須な第一歩は、カンボジアの国会が2003年から検討している障害法案を可決すべきである。最も弱い国民をもっと総合的に保護する制度を作るために、カンボジアが条約の指導を受けて、法案を是正すべきである。この法案は、カンボジアに存在している障害者の権利に関する制度を改善し、条約の順守を実現する。
ダーシ・J.・ゴルツ
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 155
中国の経済成長による代償は高い:環境や天然資源の劣化。現在、中国の法制度は天然資源を保護することはできない。中国の国務院が環境問題を管理するための民事や行政制度の成立を表明した。中国の国務院が表明した目標のいくつかは、ニュージーランドのように、専門環境裁判の成立により、達成できると考えられる。専門裁判は環境保護を促進し、そして専門者を生み出すため、一貫した判決が期待できる。中国法が専門裁判を明示的に認定するため、環境裁判が中国法制度に適合すると考えられる。実際、中国には専門裁判が、海事裁判のように存在してる。専門裁判は中国のすべての環境問題の解決策にならないが、必須な第一歩である。
レイチェル・ブレム・キング
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 189
日本の人口減少や少子化のため、国の社会規範や法制度が女性に出産の重圧をかけている。その期待に沿うため、日本の女性は母親になる能力を上げるために生殖介助術(以下ART)と呼ばれる新しい医療技術に頻繁に頼っている。ARTには人工授精、体外受精、代理出産が含まれる。その方式のいくつかは日本の法律や社会によって認められているが、人口受精や代理出産を含む特定の方式は強く否認されている。日本の現在の法制度は、生殖の伝統的基準に当てはまらないARTのすべての方式を利用することを防いでいる。法的な母親の親権もまた、狭い出産事情に制限されている。
日本の法律や社会規範は女性に対して、ARTの利用範囲を制限するが、男性に対しては、ART方式をより利用しやすくしており、父親の親権がより広く認識されている。性別によるARTの利用に対する不平等な待遇は、日本女性に対する差別であり、日本国憲法や女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(以下“CEDAW”)の違反になる。この問題を直すため、そして日本女性を守るため、日本政府は近代的な親権の概念を認識する新しい法律を成立し、現在の法律の差別効果を除去しなければならない。
デブァン・M.・スミス
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 217
2006年末、ニュージーランド国会で2006年度の証拠法に68案を加え、初めてジャーナリストが情報源を秘密にすることを認めた。ニュージーランドのシールド法は国内や海外の政治家、ジャーナリストや評論家に容認された。
ニュージーランドのシールド法は報道の自由を拡大してるが、ニュージーランドの情報の自由な流れに対する歴史的に強い公約を満たさない。68案の明らかな欠陥は裁判官がその法的保護を簡単に解除できることである。情報源を公開することの公益が情報源を秘密にすることの公益を上回る審判決で、その法的保護を解除することができる。 残念ながら、68案のような法律は悪用に実績があり、公正な裁判に対する懸念もある。
その観点から見れば、案68は3つの目的のために増強されるべきである:1)ニュージーランドの情報の自由な流れに対する強い公約を満たすため;2)ニュージーランドの1990年の権利章典の要求を満たすため;3)他国の民主政治の有効なモデルと一致するため。アメリカの連邦法やワシントン州のシールド法は法源の参考になりうる。ニュージーランドはこれら二つのモデルの保護革新を研究するばかりだけでなくて、その欠点も研究すべきである。法律的や政策的な観点から、連邦の現状は訓戒的な話に役立つべきである。一方、ワシントン州の法律は報道の自由な流れと情報源の秘密の必要性の間で適切なバランスが取れている。
シーリ・アイリーン・ウィルソン
18 Pac. Rim L. & Pol'y J. 249
要約:豪州の1992年の重大な『マボ対クイーンズランド州(第2号)』判決は、ヨーロッパによる植民地化以来、無主の地の概念を廃止し、アボリジニーが伝統的な所有地に法的な所有権を持てることが認めた。翌年、この革新的な判決は1993年の先住民所有権法(以下“NTA”)の立法により制定法となった。しかしながら、これらの判例法と制定法は、アボリジニーの海洋所有物の問題を適切に取り扱うことに失敗した。多くのオーストラリア先住民族にとって伝統的な所有地の所有権は、単純に海岸線で絶たれるのではなく、周りの海岸、潮間帯や岸から離れた海洋を含む。この先住民の考え方は、土地の所有権と海洋の所有権を明確に区別して統制する法典に至った西洋の考え方と全く対照的である。
NTAは、伝統的な領域が土地、海洋にかかわらず、アボリジニーの排他的な所有権を認める。しかし、海洋に対する先住所有権を初めて取り扱った訴訟である『オーストラリア連邦対ヤルミル』(以下“クローカー・アイランド”)では、先住所有権を認めることは、必ずしも排他的にする必要はないと判定した。この先例となる判決は、アボリジニーの排他的な所有権の妨げとなり、先住族が海域の所有及び管理を行っていることの歴史的な証拠を提供できるにもかかわらず、アボリジニーの海洋の資源の管理を否定する。この記事では、『クローカー・アイランド』判決は、NTAにを順守しておらず、アボリジニー法や文化の間違った解釈に基づいており、覆されるべきである、と論じている。さらに、この記事は、先住民が伝統的に排他的権利があることを証明できた場合、先住民の所有権は、伝統的な海洋所有物の排他的な権利を認められなければならない。豪州の歴史的な所有権奪取政策による被害を是正し、アボリジニー主権を推進するには、アボリジニーに伝統的に所有していた所有物に対し所有権を認めるのは核心的である。